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月夜の晩に、空を見上げたときのことを、思い出してみてください。
誰もが知っているように、夜の空には、息をのむほど美しい、満点の星空が広がっています。
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数え切れない星たちが、瞬くように輝きを放っています。
そしてたくさんの星たちに囲まれながら、月が、優しい青白い光を放っています。
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あなたは、なぜ月が、こんなにも優しい光を見せてくれているのか、気になったことはございますか。
月は、満ち足りかけたりするので、他の星たちのように、いつも同じ輝きを放つことはできません。
けれど月は、夜になると必ず、その優しい表情を、私たちに見せてくださいます。
周りの星たちが、どんな場所に移動しても、月だけは必ず、毎晩、その顔を見せて下さいます。
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あなたは、それがどういうわけか、気になったことはございますか。
月はいつも、あなたに眠りにつく時間を知らせて下さります。
月があるおかげで、今日が何日かを知ることもできます。
そもそも月はなぜ、このような一風変わった動きを、私たちに見せて下さるのでしょうか。
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それは月が、実はとってもとっても、寂しがりやさんだからです。
泣いてしぼんだり、怒って膨れ上がったりするのは、
「もっと私だけを見てくださいな。」
「他の星たちのことなんか、放っておいてくださいな。」
と、月が思っているからです。
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時には、悲しみに暮れるあまり、お家に帰ってしまうこともありますね。
また時には、今日は最高潮と言わんばかりに、太陽とセッションして、素晴らしい光を見せて下さるときもあります。
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これは、いったいどういうわけでしょうか。
月は、僕のことが好きなのかしら?
それとも、嫌いなのかしら?
放っておいてほしいのかしら?
それとも、もっとかまってほしいのかしら?
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私たちは、いつの間にか、月があるのは当たり前のように思い
気づけば、月のことが大好きになってしまいます。
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でもやっぱり、月の気持ちはわかりません。
いったい、どうしたらいいのでしょうか。
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答えは簡単です。
月に、話しかけてみればいいのです。
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「お月様、お月様。
なぜ君はいつも、泣いたり、笑ったり、怒ったりしているの?」
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「君は、僕のことが嫌いなの? それとも、好きなの?」
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するとお月様は、こう、答えてくださいました。
「あらまあ、なんて嬉しいことでしょう。こうして、話かけていただけるなんて。
こんなにも、私を見て下さっているのは、あなたが初めてです。
嬉しすぎて、照れてしまいます。」
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そう言って、お月様は、黙りこくってしまいました。
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「あれれ。僕は、いったい何をしに、ここまで来たんだろう。
結局、お月様は、僕のことが嫌いなの?
それとも、本当は好きなのかしら?
よし、また明日も来てみるかぁ。
明日になったら、何か、わかるかもしれない。」
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そう思った僕は、翌日の晩も、お月様に、同じことを聞いてみました。
「お月様、お月様。
なぜ君はいつも、泣いたり、笑ったり、怒ったりしているの?」
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「君は、僕のことが嫌いなの? それとも、好きなの?」
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するとお月様は、こう、答えてくださいました。
「あらまあ、なんてことでしょう。今日もまた、会いに来てくださるなんて。
嬉しくって、気絶してしまいそう。」
そう言って、お月様はまた、黙りこくってしまいました。
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いったいどうしたものでしょう。
これでは何の解決にもなりません。
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僕は、考えました。
「お月様のために、なにかしてあげられることがあるかしら。」
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「そうだ。お月様のために、歌を歌ってあげようじゃないか。
僕が大好きな歌を歌って聴かせたら、きっと、お月様は元気がでるにちがいない。」
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そして翌日の晩、僕はこっそりお月様に会いに行きました。
そして、ゆったりと、透き通った声で、歌を歌い始めました。
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「僕の声を聴いてごらん。
僕は、君の輝きとは違うけれど、
こんなに透き通った声で歌えるよ。
きっと、きみの優しい光と合わされば、
君はもっともっと美しくなって、
誰にも負けない明るい光を放てるさ。」
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僕は、月の光に寄り添うように、そっと、なんども歌いました。
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聞こえているか、聞こえていないか、わかるかわからないか、
それは、ちょうどよく、なんともここち良い響きでした。
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すると突然、お月様がこう、話しました。
「あなたの歌は素晴らしい。
けれど、私の美しさにはかなわない。
きっと、あなたの声がここまでくれば、
あなたの素晴らしさが、もっとよく感じ取れるはず。」
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そこで僕は、こう言いました。
「君が僕を好きになったら、きっと君のところで歌ってやるさ。
けれど、君が僕を嫌ってるなら、ぼくは一歩たりとも動きはしないさ。」
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さあ、いったいどうしたことでしょう。
ふたりは、一歩たりとも譲りそうにありません。
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「今夜は夜も遅いし、つづきはまた明日にしよう。」
ふたりはそう言って、今夜はお開きにしました。
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さて次の晩、そしてまた次の晩も、僕とお月様は、同じことをくりかえしました。
けれども、ふたりは、いっこうに譲りそうにありません。
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そうしていくうちに、あっという間に、約一年が過ぎてゆきました。
僕とお月様は、もうへとへとで、あきあきしてきました。
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お月様は、こう思います。
「いったいぜんたい、私があなたに、何をしたというのかしら。
私はただ、あなたが会いに来てくださるだけで、
とってもとっても嬉しくて、幸せだというのに。」
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「今晩、あの方の歌が聞こえたら、伝えてさしあげましょう。
いったいどうしてそんなに遠くで歌っていらっしゃるのですか?
私のところへはもう、来てくださらないのですか?
あなたは私のことが、好きなのですか?
それとも、嫌いなのですか?」
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さて、その晩ふたりはどうなったのでしょうか。
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あなたは、ふたりがどうすれば、本当に幸せになると思うでしょうか。
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あなたなら、もうお分かりのことかもしれません。
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そう、ふたりはどんなに離れた場所に居ても
周りの誰がどう言おうと
本人たちが、相手についてどう言おうと
ふたりは互いに、
「愛してやまない最高のパートナー」ということを。
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今回のお話は、なんだかロマンティックなお話になりました。
そうです。
きっとあなたはもう、お気づきのことでしょう。
これは、恋愛・パートナーシップにおいて、とってもよくある「パターン」です。
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いったんこのパターンにはまってしまうと、なかなか抜け出せないようです。
どこからどう見ても、ふたりは愛し合う最高のパートナーなのに、
なぜ、こうなってしまうのでしょうか。
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それは、相手の気持ちを、素直に受け取れていないからかもしれません。
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ふたりとも、いつだって素直な気持ちを表現しています。
けれども、どこでどうしたから、こうなってしまったのかしら。
と、いつのまにやら、迷路にはまってしまったのです。
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迷路を抜け出す方法は、ひとつかもしれません。
ふりだしにはもう、戻れないから仕方ありません。
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つまり、目指すゴールはたったひとつだけあります。
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そうです。
「ふたりが同じゴールを目指せば解決する。」
ということです。
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同じゴールを目指すとは、いったいどんなことでしょう。
それは例えば、
ふたりでお店を営むことかもしれません。
ふたりでピクニックに出かけることかもしれません。
ふたりで一緒に暮らすことかもしれません。
そして、ふたりで一緒に眠ることかもしれません。
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どんなゴールも、きっと素晴らしい時間を過ごせることに変わりはありません
少なくとも、遠く離れた場所にいて、お互いの思いを主張しあうより、何百倍も増しです。
さて、あなたはどんなゴールなら、2人はゴールにたどり着けると感じるでしょうか。
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どのようなゴールを選んでも、きっとふたりは今よりずっと、幸せになるでしょう。
なぜならふたりは、もう約一年も離れ離れで、会うことすらしていなかったのですから。
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あなたがもし、僕とお月様のどちらかだとしたら、
あなたは、どんなゴールを目指したいでしょうか。
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ゴールを出た先には、全く新しく、そしてもっともっと素晴らしいふたりの人生が、始まっていくことでしょう。
ふたりがゴールにたどり着いたことを、お祝いしてくださる方が、きっと大勢いることでしょう。
だってお月様はいつだって、数え切れないほどの星たちと共に、夜を過ごしてきたのですから。
そしていつだって僕は、皆にとって心地よい歌声で、みんなの光に寄り添っていたのですから。
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おしまい。
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最後までお読みくださりありがとうございます。
何か参考になりましたら幸いです。
あなたに沢山の愛と光、たくさんの幸せが訪れますように。
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